名古屋地方裁判所 平成9年(ワ)2852号 判決 1999年1月27日
原告(反訴被告)
小林悦子
被告(反訴原告)
山本明信
主文
一 被告は、原告に対し、金二五万二〇〇〇円及びこれに対する平成八年三月三一日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告の被告に対する別紙事故目録記載の交通事故に基づく損害賠償債務は金三四万二九六〇円及びこれに対する平成八年三月三一日から完済まで年五分の割合による遅延損害金の支払を超えて存在しないことを確認する。
三 原告は、被告に対し、金三四万二九六〇円及びこれに対する平成八年三月三一日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。
四 原告のその余の請求、被告のその余の反訴請求をいずれも棄却する。
五 訴訟費用は、本訴反訴を通じてこれを五分し、その二を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。
六 この判決は第一、三項に限り仮に執行することができる。
事実及び理由
第一請求
(本訴)
一 被告は、原告に対し、金六三万円及びこれに対する平成八年三月三一日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告の被告に対する別紙事故目録記載の交通事故に基づく損害賠償債務は存在しないことを確認する。
(反訴)
原告は、被告に対し、金五八万一六〇〇円及びこれに対する平成八年三月三一日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。
第二事案の概要
本件は原告運転車両と被告運転車両との間の交通事故によって原告、被告が被った損害につき原告(本訴)、被告(反訴)がそれぞれ民法七〇九条に基づき相手方に対し損害賠償請求をし、原告が被告に対する損害賠償債務の不存在の確認を請求した(本訴)事案である。
一 争いのない事実
1 事故(以下「本件事故」という。)の発生
別紙事故目録記載の事故が発生した。
2 第一車両の損傷
本件事故により第一車両が損傷し、その修理費は九五万九九九二円を要するが、当時の第一車両の時価は六三万円であるから、いわゆる全損として本件事故による第一車両の損害は六三万円相当である。
3 被告は原告に対し、前記物損以外にも人身損害に係る損害賠償請求権があるとして、原告と争っている。
二 争点
1 事故の態様及び双方の過失の有無、程度、過失相殺
2 損害の存否、損害額
第三争点に対する判断
一 争点1について
前記争いのない事実及び証拠(甲一ないし三、乙一、二、原告、被告各本人)によると、以下の事実が認められる。
1 本件交差点の概要は別紙交通事故現場見取図のとおりであるが、南北方向道路は本件交差点付近では片側四車線で、見通しはよく、それぞれその中央分離帯よりの車線(歩道側からそれぞれ第四車線であり、以下各車線をそれぞれ歩道側から「第一車線」等と表示する。)は右折専用車線となっていた。
また本件交差点には信号機が設置されており、本件事故当時は南北方向道路側が青色信号となっていた。
なお南北方向道路の制限速度は五〇キロメートル毎時であった。
2 原告は、南北方向道路を北から南に進行してきたが、本件交差点で右折するため第一車両を一旦は本件交差点内の南進車線の第四車線を延長した位置と北進車線の第四車線を延長した位置とにまたがる位置に停止させた。そして、その後、多少前進させ、その前部を本件交差点内の北進車線の第三車線を延長した位置に進入させ再度停止させた。
3 被告は、南北方向道路を北進中、本件交差点の次の交差点で右折することから、北進車線の第三車線を時速約五〇キロメートルの速度で第二車両を走行させた。そして本件交差点直前で、前方約二〇・八メートルの地点に停止している第一車両を発見し、直ちに急制動及び左転把の措置を講じたが回避できず、第二車両右前部を第一車両前部に衝突させた。
以上のとおり認められる。
原告は、その二度目の停止位置も本件交差点内の北進車線の第四車線を延長した位置であったこと、被告が北進車線の第四車線を走行し、一旦は右折信号まで出していたもので、しかるに右折することなく停止していた第一車両に衝突したことを主張し、同旨の供述をするが、第一車両の後続車の運転者が立ち会った実況見分調書(甲二)の記載内容に照らし採用できない。
そして右によると、原告は本件交差点で停止するに当たり、北進車線の第三車線を走行、直進する車両の進路を妨げる位置で停止したというものであるからその過失は明らかといわねばならない。他方、被告も、見通しのよい本件交差点内に既に右折のため停止状態となっている第一車両に前記位置まで気がつかなかった前方不注視の過失があり、前掲証拠によると、その原因は、被告が直前に飲酒をしたことによる影響も認められるものであり、これら双方の過失を考慮すると、本件事故発生については、原告側に六割、被告側に四割の過失があったものと認めるのが相当であり、後記それぞれの損害についても右割合による過失相殺がされるべきである。
二 争点2について(原告分)
1 第一車両の損傷(請求額同じ) 六三万円
前記のとおり、本件事故により第一車両が損傷し、その修理費は九五万九九九二円を要するが、当時の第一車両の時価は六三万円であるから、いわゆる全損として本件事故による第一車両の損害が六三万円相当であることは当事者間に争いがない。
2 過失相殺
前記のとおり原告の損害については六割の過失相殺がされるべきである。
630,000×(1-0.6)=252,000
三 争点2について(被告分)
1 第二車両の損傷(請求額同じ) 四八万円
証拠(甲五)及び弁論の全趣旨によると、本件事故により第二車両が損傷し、その修理費は約八〇万円を要するが、当時の第二車両の時価は四八万円であるから、いわゆる全損として本件事故による第二車両の損害は四八万円相当となることが認められる。
2 積荷代(請求額同じ) 四万一六〇〇円
証拠(甲五)及び弁論の全趣旨によると、本件事故による第二車両の積荷代は頭書金額を要したことが認められる。
3 合計(請求額同じ) 五二万一六〇〇円
以上の合計は頭書金額となる。
4 過失相殺
前記のとおり被告の損害については四割の過失相殺がされるべきである。
521,600×(1-0.4)=312,960
5 弁護士費用(請求額六万円) 三万円
本件事案の内容、認容額等考慮すると、これに対する弁護士費用は頭書金額をもって相当とする。
6 被告は原告に対し訴訟は提起していないが、人身事故に係るその余の損害賠償請求権を主張する。
しかし、証拠(原告、被告各本人)及び弁論の全趣旨によると、被告は本件事故に基づき肋骨骨折等の傷害を負い、当時通院していた樋口整形外科等に入通院し治療を受けたが、その治療費等は自賠責保険等でてん補されたことが認められ、他に具体的な損害の主張立証はない。そして前記過失相殺等も考慮すると結局前記物損以外にその損害を認めるに足りる証拠はないといわねばならない。
第四結論
よって、原告の本訴請求は被告に対し損害金二五万二〇〇〇円及びこれに対する本件事故日から完済まで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求め、原告の被告に対する本件事故に基づく損害賠償債務が三四万二九六〇円及びこれに対する本件事故日から完済まで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を超えて存在しないことの確認を求める限度で、被告の反訴請求は原告に対し損害金三四万二九六〇円及びこれに対する本件事故日から完済まで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度でそれぞれ理由があるからこれを認容し、その余の本訴、反訴請求はいずれも理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法六一条、六四条を、仮執行の宣言につき同法二五九条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 北澤章功)
(別紙)
事故目録
一 発生日時 平成八年三月三一日午後七時五〇分ころ
二 発生場所 名古屋市守山区大字瀬古字中島一五番地先路線上(国道一九号線)
三 第一車両 自家用普通乗用自動車(名古屋七三そ五五三一号)
運転者 原告
四 第二車両 自家用普通乗用自動車(名古屋七三め九〇二二号)
運転者 被告
五 事故の態様 南北方向の道路とほぼ東西方向の道路との交差する信号機の設置された交差点(以下「本件交差点」という。)において南方から北方に進行してきた第二車両と北方から西方に右折進行する第一車両とが衝突した。
交通事故現場見取図